黒部横断 ~エピローグ~


 21時過ぎに扇沢手前の林道に到着して車を乗り換える。amatchと握手してそれぞれの帰途につく。僕はここから3時間の下道と高速運転。帰宅するころには日付が変わっているだろう。

 帰りの運転で今回の旅を思う。
 まずはなんといっても誘ってくれたamatchに感謝。信頼のパートナーがいたからこそ成し遂げられた行程だった。トラブルや困難もあったがamatchという信頼のパートナーがいたからこそ乗り越えられた。本当に感謝したい。

 早春の黒部には忘れていた情熱が眠っていた。いつからか忘れていた山へ入るときの緊張感、孤独感がそこにはあった。今回の黒部横断で山はかくも厳しく、優しく、素晴らしいものだと再認識した。忘れていた山への情熱を取り戻すことが出来たと感じる。

 あらためてマッスル北村氏の言葉を引用したい。今こそこの言葉の意味が心の底から理解することが出来た。 

「他人を納得させる記録や結果よりもたとえ自己満足と笑われようが自分で自分に心から「よくやった」と、ひとこと言える闘いこそ、まことの勝利であり人間としての自信と誇りを得て人生で最も大切な優しさや思いやりを身にまとう瞬間だと思う」

 日々練成

[ 2018/04/08 00:24 ] 特別企画 | TB(0) | CM(0)

黒部横断 最終章

 12時
 刈込池を過ぎたあたりから堰堤が出てきた。快適クルージングもここまで。スキーを脱いで堰堤を乗り越える。ここから対岸に渡ったり堰堤を乗り越えたりとルートがよくわからない。最新の地形図だったが、地形図はしばらく更新されていないのか反映していないのか、地図にない作業道を見つけるのに苦労する。何度も堰堤を乗り越えたりなかなか進まない。なんとか作業道に復帰し先へ進む。

 13時
 何度もデブリを乗り越え、泥鱒池を過ぎた先の橋を対岸に渡ったところでルートを見失う。閉鎖されたトンネルを覗いてみるも先はつながっていなさそうだ。地形図では線路が繋がっているが実際は繋がっていない。古いトンネルも先はつながっていないっぽい。橋を戻って地形を眺めるがゴルジュ帯につくられた堰堤なので20m近い高さがある。うろうろすること1時間ほどで、amatchがルートを発見した。すさまじいデブリでルートが寸断されていたのだ。土と石だらけのデブリを超えて堰堤の下に出ると作業道に復帰することができた。

 15時
 作業道を歩いたり僅かな斜度を滑ったりして先へ進むがまだまだ立山駅は遠い。途中道路をずれて廃線となった作業用トロッコ線路に迷い込んでしまい大幅に時間をロス。日暮れ時間も迫り気持ちも焦るが仕方ない。雪も切れてスキーを背負いブーツでの歩きは足も痛いしスピードもでない。100mが長い。

 17時半
 ふと先を見ると人工的な明かりが遠くに見えた。立山駅だ。残り1kmあまり。もう雪は消えてコンクリートの歩きのみ。

 17時50分
 駐車場到着。ついに黒部横断完了。amatchとがっちり握手だ。いろいろトラブルはあったが、信頼のパートナーと一緒に困難を乗り越えることができた。しかし感動の余韻を感じるのもそこそこ。ここから大町まで車の往復が待っている。そのうちk岡さんも到着。さすがに早い。聞けばトロッコの線路に迷いこんでしまったとのこと。雪の状態も過去最悪だったらしい。電車の時間もあるというのでここでお別れ。ありがとうございました!
 僕たちは急いで着替えて道具を撤収したら車に乗り込んで高速を目指した。

 続く 

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 日々練成

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 堰堤を乗り越えて進む

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 作業用トロッコの履工も埋もれる

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 デブリの上には滝が

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 超巨大デブリ。すごすぎ

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 ひたすら堰堤

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 雪も少なくなってきた

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 amatchの指差す先は…

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 立山駅が見えた!
[ 2018/04/06 06:09 ] 特別企画 | TB(0) | CM(0)

黒部横断③ 黒部湖~ヌクイ谷~刈安峠~中ノ谷~ザラ峠~湯川谷上部


 テント泊では夜中何度か起きたが静かな夜を過ごせた。
 2時か3時にトイレに起きると、満月に雲がわずかにかかっていた。この秘境の中で人間が生きているというのは実は奇跡なんじゃないだろうかと思える静寂。生き物の気配が感じられない世界で自分がいるという事が不思議に思えた。

 4時に起床して食事を取る。レトルトの中華丼はイマイチで食が進まない。やっぱりカレーにすべきだ。なんとなく荷物をまとめたりしてテントを出ると外は明るくなっていた。今日は高曇りの天気だ。テントを撤収してゴミを確認。となりのk岡さんも起きてきてザラ峠までは僕たちと同じルートでいくらしい。お互いの無事を願う。

 6時過ぎに幕営地を出発。ヌクイ谷を詰めて途中の沢から刈安峠へ直登する。ヌクイ谷は両岸からの雪崩で埋まっている。黒部はどこも雪崩だらけだ。
 刈安峠直下の斜面を直登するがなかなか斜度がきつい。日も当たっていないので緩まずシールが効きにくい。あっさりシールをあきらめアイゼンにチェンジ。ピッケルを持ち替えながらジグを切って急斜面を登る。スタートから2時間で刈安峠に到着だ。k岡さんはスキーのまま登りあげてきた。凄い。

 スキーで中ノ谷へ高度を維持しながらトラバースする。amatchが先行してくれたが、途中で川が出ていてトラバースはアウト。高度を150mほど落とす事になってしまった。(k岡さんは川にはまらずはるか上までトラバースしていた)
 中ノ谷は雪たっぷりの面ツルバーンで快適歩行。と、上部から2つのシュプールがあり、どうやら昨日ザラ峠を越えてきたスキーヤーがいたようだ。雪が詰まった中ノ谷は最後まで快適歩行でザラ峠に到着。先行していたk岡さんはここからさらに鬼岳方面へ向かうという。お気をつけて!

 いよいよザラ峠越えだ。後ろを見れば黒部の山々が連なっていた。400年以上前の厳冬期にここを超えたというのはにわかには信じられないが、真偽はともかく素晴らしい歴史ロマンだ。

 スキーを履いて滑降モード。出だしはカリカリのうえに岩がそこらじゅうに隠れていてスキーが泣く…。慎重にルートを見定めて2ターン程度ずつ降りていく。右手からの巨大なデブリを避けて高度を落とす。2000mまで落とせば快適斜度の広大なバーンが広がっていた。amatchと快適クルージング。国見谷出会いの下まで快適に滑ることが出来た。

 続く

 日々練成

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黒部湖の幕営地

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 通常は湖底に沈んでいる巨木

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 ヌクイ谷を行く

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 振り返れば黒部の山々

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 急斜面をアイゼンで登る

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 刈安峠に到着

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 中ノ谷は雪たっぷり

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 ザラ峠が見えた

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 ザラ峠にて

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 峠からの急斜面を安全第一で滑る

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 デブリを避けながら

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 デブリを越えれば面ツルバーンが広かる

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 しばしの快適クルージング
[ 2018/04/05 21:29 ] 特別企画 | TB(0) | CM(0)

黒部横断② 針ノ木谷~黒部川 (テント泊)


 川幅が広くなってくるとその先に開けた地形が見えてきた。黒部湖である。現在は水量が減り湖底が完全に出ているのだ。ようやくここまでこれた。しかし困難は続く。針ノ木谷側から平の渡側へ移動するのに大きな雪解け川が流れていてこれを渡渉しなければならない。サンダルに履き替えて渡渉ポイントを探してうろうろするもののどこも川幅は広く流れも急だ。しかも思ったより深い。どうにか渡れないかとちょっと流れに足をいれると緩んだ底の砂礫が膝まで足を飲み込む。雪解け水は痺れるような冷たさで長い事浸かってなんかいられない。そのうちamatchは流れにサンダルを片方持って行かれてしまった。当然片足は裸足である。湖底はごろごろ石だらけで裸足はキツイだろう。

 意を決してamatchが渡りだす。やはり流れは急で膝上までの深さにまでなると水圧が相当厳しいみたいだ。おまけに重荷とバランスを崩したら大変なことになる。慎重に流れを読んで無事対岸に到着。僕もポイントを決めて渡る。痺れる冷たさと水圧に恐怖を覚えながらなんとか無事に対岸に渡れた。しかし予想外の深さにウエアを濡らしてしまった。反省である。

 どうにか二人して対岸に渡ると先行者の方がツエルト(!)を張っていた。挨拶してトレースのお礼をいう。黒部横断は何度かやっていて今回はとあるルンゼを滑るのが目的らしい。その装備やスタイルを見てもさぞ名のあるスキーヤーの方であろう。(K岡さんありがとうございました)

 先行者の隣に適地があったので雪上に幕営。amatchの豪華なテントで余裕のあるテント泊だ。テント内に潜り込めばあたたかく快適な宿。持ってきた食料を各々が調理して安らぎの食事タイム。
 
 しかしイマイチ言葉少なな二人。体力的には余裕があるのだが、なんというか精神的にやられた感じだ。こんなはずじゃなかったという事がたくさんあり黒部は甘くないと思い知らされた。しかし明日はいよいよザラ峠越えが待っている。ビールで乾杯もそこそこにシュラフに潜り込むといつの間にか落ちていた。

 続く

 日々錬成

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 川幅が広くなりおおきな石が目立ってくる

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 ここも渡渉

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 対岸の平の渡とヌクイ谷が見えた。手前は渡渉した雪解け川

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 渡渉ポイント探してうろうろ。白波立つほど流れは激しい

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 どおおりやあああ(冷たい!)

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 今夜の宿は豪華な別荘だ

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 サッポロクラシックヴィンテージで乾杯
[ 2018/04/04 23:39 ] 特別企画 | TB(0) | CM(0)

黒部横断① 扇沢~針ノ木雪渓~針ノ木峠~針ノ木谷 


 3月31日 8:30
 扇沢から夏道に沿って針ノ木雪渓を目指す。雪は多く沢は全て埋まっていた。気温は高く日差しは徐々に強くなってくる。日焼け対策は万全に。歩き出しでジャケットを脱いでアンダー一枚。雪は緩んでいる。

 快適な沢歩きが続く。両側からのデブリが凄い。汗をかかないようにペースを調整。一時間ほどで大沢小屋を過ぎる。ここから徐々に傾斜が出てくるがシールが良く効いてくれるので問題ない。10時頃に標高1900m付近まで登ると傾斜が一気にきつくなってきた。2000m付近から雪質が変わり、厚いモナカで歩きにくい。それでも標高を上げて11時半に2300mまで。シールが効きにくい雪質になり傾斜もきつくたまらずジグを切る。先行者ははるか先だ。ラスト標高差200mが本当にキツイ。amatchはシールが下駄になり、かなり脚をもっていかれてきつそう。それでも持前のねばりで登る。

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目指す針ノ木峠はまだまだ先

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 重荷が脚にくるwww

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 そこらじゅうに巨大デブリが

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 はるか上からの雪崩

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 上空には飛行機雲 

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 徐々に傾斜が出てくる

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 急すぎぃ!

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 ラスト200mがマジ遠い

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 amatchガンバ!

 12時20分に針ノ木峠に到着だ。目の前には北アルプスの大展望。槍ヶ岳も良く見える。
 扇沢から約4時間。ゲートから6時間とゆっくりペースだが暑さと重荷で結構きつかった!少々休憩したらシールを外して滑降モードだ。出だしは傾斜が急だが緩んでいるので滑りやすい。そこらじゅうのデブリを避けながら滑降ライン引く。30分程で標高2000m付近まで落とす。ここからは狭い谷に入り、雪が切れていたりデブリでふさがれていたり、藪に阻まれたり川が出ていたりとライン取りが難しい。スキーを脱いだりカニで降りたり登ったりと距離が稼げない。

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 針ノ木峠に到着!針ノ木小屋の屋根と後ろは北アルプスのランドマーク、槍ヶ岳

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 出だしは急だが緩んでいるので滑りやすい

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 amatch攻める!

 と、ここで気がついたのだが先行者のライン取りが凄い。先の見えない起伏や雪がつながっているがわからない場所を迷いなく滑っている。ここしかないというポイントを一度も止まらないで滑っているのだ。まるで先が見えているような…。一体何者だろうか。

 13時半、1879mの針ノ木谷に合流。
 針ノ木谷は両側からのデブリが堆積して意外とスキーで滑ることが出来た。ここでも先行者は迷わず止まらずにラインを取っている。
 雪崩のすさまじい破壊痕に圧倒されながら秘境の中にいることを実感。途中から微妙なアップダウンがあるのでスキーで滑るだけとはいかずここでも時間を取られた。

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 両岸からの雪崩が絶えない

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 デブリが行く手を阻む

 15時半
 ようやく谷が開けてきていよいよ黒部湖まで近い。このあたりから何度も渡渉をする。渡渉ポイントを探すがどこも微妙でぎりぎりのジャンプで渡渉。一か所大きな渡渉でスキーを担いだとき、いつのまにか片方のストックに先がないことに気が付く。え?なんで?担いだ時にロックが外れてしまっていたのか。ここでストック1本がなくなるのは痛すぎる。だが何とかするしかない。無くなったストックの先は流されて黒部湖に沈むだろう…。

 テンションも下がるが先に進むしかない。だがこの先にはさらに困難が待ち受けていたのだった。

 続く

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 日々練成

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 見た目より結構やばいんです(ストックの先はここで落とした)

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 ここから渡渉の連続

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 ジャンプ一発!

[ 2018/04/03 21:25 ] 特別企画 | TB(0) | CM(0)