2016 厳冬期白山単独1day (日帰り)


 夏はアクセスの良さで賑わう白山も冬になると登山口へ続くゲートが閉ざされ、遥か遠い山となる。
 
 冬に下界から見上げる白山の白さは別格で、厳冬期その頂に立つのは僕の憧れでもあった。数年前に一度11月に自転車を使って挑戦し、あまりの雪に一度目は敗退。すぐ2度目に挑戦して山頂に立った。翌年3月に白峰からスノーシューで源君と登頂。一昨年はNOZA君、源君と3人で初めての厳冬期登頂を果たした。去年も1月に登頂しているが、単独となると流石にレベル高く慎重に計画を練っていた。月曜日は休みと好天が重なりまさに行くしかない状況。かねてからの目標であった厳冬期白山単独ワンディに挑戦する事にした。

 前日は仕事明けでそのままチームで根上駅伝に出場。昼に帰宅してすぐ準備をする。いつもより慎重に。夕方少し横になろうと思ったが興奮しているせいか全く眠れなかった。ご飯を食べて布団で少し目を閉じるが眠れず。ビビっているのか?
 眠れないまま22時に自宅を出発する。天気図を見ると間違いなく放射冷却で寒い朝になるだろう。
 23時40分頃白峰ゲートに到着。積雪量は去年の半分くらいだ。外に出ると星が凄い。そして寒い!車の温度計はすでにマイナス10度だ。いつもより入念に準備する。足にテーピングはしないが今回は念のためプロテクトJ1を塗った後に絆創膏を貼った。
 なんだかんだで0:25分ゲートを出発する。

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積雪は去年の半分くらい。気温は低く雪は軽かった。

 ゲート付近には昨日のものと思われるスノーシューの足跡が4人分?ついていた。出だしはブーツラッセル。雪面は締まっていると思ったのだが雪が降ったのか?スノーシューはトレッキングのようだ。それと何日か前のスキーのトレースもうっすらあった。3km程でスノーシューは帰っていた。今年はやはり雪が少なく、いつものデブリゾーンも殆どない。スノーシェッド前の巨大デブリも1か所のみで板のまま問題なく通過。百万貫の岩までは1時間26分だった。

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恒例のデブリゾーンはこの一か所のみ。

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ひゃくまんさん

 しかし寒い。プロトレックの温度計はすでにエラー表示だ。時折風が吹くと更に寒い。延々と続くラッセルも徐々に深くなってくる。市ノ瀬発電所には2時間10分で到着。少し補給して出発。

 3時20分
 市ノ瀬には3時間で到着。予定通りのペースだ。手前のスノーシェッドに帰りのドリンクと食料をデポする。ここから更にラッセル。どうも降雪があったらしい。獣の足跡がそこらじゅうにある。冬は獣の楽園か。六万橋を渡って別当まで林道ラスト5km。
 最初の急カーブをショートカット。寒いのでペースを上げる。星空が凄い。なんだか左足の小指が違和感。別当に着いたら早目に処置しなければ。

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 市ノ瀬発電所。寒さでカメラのピントが合わない?

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 市ノ瀬の積雪も半分くらい。
 
 5時7分
 予定より少し早目の4時間45分程で別当到着。ここも積雪は去年の半分だ。休憩舎の入口は大きく開いている。中に入って小休止。しっかし寒い!止まったとたん震えてくる。なるべく素肌は出したくないがブーツを脱いで小指にテーピング。あんぱんを食べてエネルギー補給。保温マグのお湯が嬉しい。脱いだヘッドバンドが一瞬にして凍った。
 装備を整えてさあ出発。今年は鳥居がくぐれる。一礼して通過。一本橋は問題なく渡れた。対岸に到着したらいよいよ登山開始だ。

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 かまくら状態には少し雪が少ないかな?

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 中で小休止。寒い…

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 毎年恒例深夜の一本吊り橋。

 最初の急登にとりかかるが、氷化した雪面の上に新雪が20cm程乗っていて、スキーをかけると一気に崩れてしまって登りにくい。あれこれルートを探すがどれも微妙。藪っぽい場所でどうにか取り付きを探して登り出すが、斜度が増すとエッジをかけるたびに新雪が雪崩出す。あ、これ無理っす。僕の技術では難しいので大人しくスキーを脱いでよじ登った。中飯場まで50分かかってしまった。

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 ここからは自由にルートがとれる。
 
 中飯場を過ぎると快適な尾根歩き…となるはずだったが新雪は更に増して脛ラッセルになる。例年は風で雪面が締まって歩きやすいのに今回はラッセルだ。これも単独の試練。行くしかない。ラッセルでペースが上がらないうえに氷化斜面はやっかいだ。早々にクトーを出して氷化斜面に食い込ませて登る。斜度があるところではジグを切る度に新雪が崩れ出す。こりゃ帰りのラインは無理出来ないなぁ。

 徐々に明るくなり、振り返れば赤兎山や経ヶ岳がうっすらとピンク色に。モルゲンロートの始まりだ。程なく真っ赤に山々が染まり出す。美しい朝を今日は僕が独り占め。右手には別山が白からピンクに色を変えている。正面には白山の広大な斜面が広がっている。
 甚ノ助小屋はスルーしてエコーラインのトラバースに入る。例年は氷化している斜面も今年は雪があってトラバースしやすかった。尾根への登りは毎度キツイ。振り返れば僕の付けた一本のトレースがずっと続いていた。何だかカッコイイじゃない。

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 赤兎山と大長山に陽が当たり出す。モルゲンロートの始まりだ。

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 広大な白山の斜面。

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 純白の斜面が朝日に輝く。

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 その斜面に続く一本のトレース

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 振り返れば別山が素晴らしい。

 稜線手前で御嶽山が見えた。今日は遠くまではっきり見える。振り返れば別山が素晴らしい。さあもうすぐ稜線だ。

 稜線に登り上げると純白の白山がその姿を見せてくれた。ああ、やはり白山は美しい、その一言に尽きる。溜め息が出る。ここまで頑張ってきて良かった。この姿を見る事が出来る人間は世界に何人いるのだろうか?今日は僕が白山を独り占めだ。

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 雪煙舞う純白の厳冬期白山。やはり美しい。今日は僕が独り占め。

 ここから風が強くなる。フードを被って防寒体制。弥陀ヶ原は広大な運動場だ。疲労が出てきて五葉坂の登りがキツイ。時折氷化斜面でスリップする。集中しなければ。室堂が見えてきた。積雪は少ないが張り付いた凍りが厳冬期の厳しさを現していた。風を避けるため右側にまわりこんで小休止。寒さにたまらずダウンを着る。あんぱんを食べて補給。防寒体制をしてさあラストの登りだ。

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 御嶽山(右)と乗鞍岳(左)

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 弥陀ヶ原から続く一本のトレース。

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 氷に覆われた室堂。

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 室堂の鳥居は凄い事に。

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 これは凄い。

 室堂の鳥居は凄い事になっていた。今まで見た事ない姿だ。新しい祈祷殿も凍りで覆われている。左側を通過して山頂を目指す。まだラッセルは続く、いつになったら雪は締まるんだ…。ふと顔を上げると凄い勢いで雲が湧きだしてきた。と同時に砂のような雪が叩きつけてくる。厳冬期の白山は甘くない。そして見た事ない形の雲が頭上を過ぎていった。美しさより少し怖さがあった。これが単独か。
 ラスト標高差10mで斜面は完全に蒼氷になり、クトーが刺さらない!何度もスリップするがどうにか岩場まで来た。ルートを見出して、ウィペットを氷に突き刺し、岩の角にかけ、スキーのまま登り上げる。風は更に強くなって厳しい条件だ。山頂が目の前だ。

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 室堂から山頂への途中、雲が湧きだしてきた。

 11時12分
 出発から10時間45分で山頂に。ついに厳冬期白山単独登頂を果たす。やったぞと叫んだ。風が強く写真も撮れない。どうにか一枚証拠写真を撮影して奥社へ。奥社の姿も凄い事になっていた…。奥社で登頂のお参りをして無事を祈願する。奥社の横で風を避けてスキーのシールを剥がして滑降準備。

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 ついに厳冬期白山単独登頂達成

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 奥社は氷に覆われて2倍ぐらいの大きさになっていた。

 11時40分
 登ってきたルートの横からドロップイン。最初は氷化しているので慎重に。少し下ればパウダーだった。風に煽られながらあっという間に室堂へ滑りこむ。建物横から弥陀ヶ原へゴー。振り返れば白山が見送ってくれていた。雪の状態が不安なので帰りは谷と観光新道は避けてピストンにする。弥陀ヶ原を抜けてエコーラインの稜線へ。登ってきた斜面を滑る。パウダーを期待したが陽が昇って重雪になっていた。トラバースを一気に滑って甚之助小屋へ。ここまでくれば風も収まって穏やかな白山だ。

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 山頂はガスで覆われているがここは穏やか。

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 クリームパン潰れちゃった。

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 別山を見ながら小休止。

 12時30分
 甚之助小屋前で小休止。腰を下ろしてクリームパンを食べる。目の前には別山が。何度も言うけど今日は僕が白山を独り占めです。休憩したら一気に吊り橋まで降りる。雪は重くなかなかスキーは滑らない。いつの間にか気温が上がって暑いくらいだった。
 13時20分、吊り橋を渡って別当到着。山頂から休憩込で1時間40分だった。ここから再び林道が始まる。市ノ瀬まではジェットコースターだ。25分で市ノ瀬到着。デポしておいたモンスターエナジーで鋭気を養う。いよいよここから最後の試練だ。

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 帰りも一本吊り橋。

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 ようやくここまで来た。安堵で笑顔も出る。

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 六万橋を渡れば最後の試練が始まる。

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 デポしておいたモンスターエナジーで気合い注入。僕にはグリーンが一番合うな。

 14時47分
 市ノ瀬発電所。何と坪足の足跡がある。北電の作業員かと思ったが足跡を良く見るとランニングシューズじゃないかこれは?発電所で引き返していたが何者だろうか(後にマッハさんが途中まで追いかけてきてくれたらしい。ありがとうございます)
 滑らない林道をスケーティングと押し歩きで我慢我慢で進む。

 15時12分
 百万貫岩。意外に早く着いた感じがする。さあラスト5kmだ。予定より遅れ気味なので頑張るしかない。

 16時7分
 白峰ゲート到着。ついにやりました。厳冬期白山単独日帰り達成です。15時間45分の激闘でした。ゲート前で撮影して、スマホで無事を報告。ブーツを脱いですぐに着替えた。車に乗ると安堵感が湧き出てくる。まさに完全燃焼。達成感と安堵感に満たされて帰宅した。

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 フィナーレです。

 色々あったけど行って良かったと心から思った。最初は不安で逃げ出したい気持ちにもなったけど、仲間の応援、励ましが何より支えてくれました。無事に帰ってきてこそ自立した登山者。一つの目標を達成して、これからも安全第一で山に行きたいと強く思った。

 日々練成
[ 2016/02/09 19:44 ] 特別企画 | TB(0) | CM(4)

おめでとうございます。

厳冬期白山単独日帰り、やりましたね!おめでとうございます。へたれの私はちょっと物音がしたり、びゅーっと風が吹いただけでもドキドキハラハラして、いつ引き返そうかと葛藤!そして危ないなあと思う場面では真っ先に家族の顔が浮かんでしまって・・・だから最近は積極的な山行はしていません。そんな日々ですが、ミサゴさんの姿勢はとても好感が持てて、活躍ぶりを見るにつけつい応援してしまいます。安全に下山してこそ立派な山行です、これからもご活躍を祈っています。
[ 2016/02/10 06:58 ] [ 編集 ]

白山の単独日帰り達成、おめでとうございます。
初めて書き込みをするのTKDといいます。
いやぁ、本当にすごいですね!
今回のみさごさんの記録は今後の参考にさせていいただこうと思います。
[ 2016/02/10 15:08 ] [ 編集 ]

Re: おめでとうございます。

> 石川の母娘 さん

 コメント&訪問ありがとうございます。
 一つの目標を達成出来て良かったです。ハードな事をする度に、山行は安全第一と考えるようになりました。母娘さんのそういった気持ちや行動はとても素晴らしいと思います。無事下山、帰宅してこそ自立した登山者。慣れと油断を戒めて、これからも安全に山を思い切り楽しみたいと思います。またブログに遊びに来てください。
[ 2016/02/10 19:12 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> TKD さん

 訪問&コメントありがとうございます。

 僕自身、先に記録を作った先輩方の偉業に感謝しかありません。いつかは厳冬期白山単独、と思っていましたが、その目標を達成出来てほっとしています。大して参考にはなりませんが、少しでも手助けになればと思います。
[ 2016/02/10 19:16 ] [ 編集 ]

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