TJAR2014記録 8日目 ~リタイアまで

 足裏の痛みは酷いもんだが歩けない程ではない。むしろ膝が曲がらないのが心配だ。それでも制限時間まで19時間近くある。残り65kmを時速3km強、少し頑張れば大丈夫だ。なるべく止まらないように歩くが時折痛みで数秒立ち止ってしまう。それでも少しずつ進む。すれ違う車から沢山声援を受ける、流石望月選手の地元だけあってTJARの選手には嬉しい。途中写真を撮っていただいたりして元気を貰う。明るくなって眠気も無くなり、幻覚も消えた。

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ストックシェルターを背中で干しながら進む。まだ元気(写真は八重田さんに撮影していただきました)

 しかし次に襲ってきたのは強烈な既視感(デジャヴ)。見た事あるというレベルではなく、つい先週来た事がある感じに襲われる。試走していないのでそんな訳はないのだが、次の角を曲がると自販機があって、といった感じにずっと既視感が続き、次第に恐怖を覚えて行く。この頃からかなり精神的にやられていたのだろう、既視感に恐怖を覚え、一生懸命歩いているつもりなのに殆ど進めてない、距離表示を見ると3時間近くでたった9kmしか歩けていない事に徐々に焦りと絶望感が広がってきた。

 井川駅の手前で車で岩崎さんとTJARスタッフの方(名前を忘れてしまいました。すみません)が応援に来てくれた。僕の足がかなりきつそうという話も聞いているらしい。弱気になって時間内は厳しいかもという話をする。しかし岩崎さんは、この先で何か食べれば大丈夫。痛くてもちょっとずつ進めば突然走れるようにもなったりするから諦めないでと言ってくれた。それを聞いて、そういえば荒川小屋以来何も食べていない事に気がついた。岩崎さんとTJARスタッフの方に力を貰ってまず何か食べようと先に進む。このあたりで再び雨が強くなり、乾きかけたシューズもずぶ濡れに。膝を触るととんでもなく腫れていた。履いているタイツの縫い目が広がってむき出しになっているのを見てマジかと思った。

 12:30
 井川駅ではおでんやラーメンを売っているお店があった。雨も酷いのでここで食事しようとテントの中へ。おばちゃんにとりあえず焼いていた餅とラーメン、おでんを注文する。炭焼きした餅は食べ応えがあってうまかった。初体験の静岡おでんは味噌味で美味い。ラーメンは二人分ぐらいの量が入っていてびっくりした。
 ここでなんと円井さんが車で駆けつけてくれた!予想していなかった円井さんの登場にびっくり。奥さんと共に応援に来てくれたのだ。MH.TRCのチームシャツまで着てくれている。脚がヤバいかもと話をする。そしてここにも小野さんが登場。トレラン会の大物二人に応援してもらっているのに弱音ばかり言ってしまい情けなかった。
 小野さんから、足のマメが酷い時の最終手段は足裏にダクトテープを張ると聞いた。これをすればかなり楽になるらしい。しかしやってしまったらその後は間違いなく歩けないだろう。大会後の仕事に影響してしまう・・・。これは出来ない、家庭と仕事あってこその挑戦だ。限界までやってしまって仕事が出来なくなるのは絶対に避けたかった。

 お腹も満たされ、トイレに行くが膝が曲がらないのでトイレが出来ない。四苦八苦して何とかする。温かい物が入ると少し元気も出てきた。さあ、行くしかない。円井さんと小野さんと握手して雨の中出発。すぐに井川ダムが見えてきた。そういえばずっと携帯の電源も切っていたので、トンネルの入り口で雨宿りしながら久しぶりに電源を入れる。LINEにチームメンバーからの激励が読み切れないほど入っていた。涙が溢れて来る、頑張らないと。そして僕の師匠のYASUHIRO先生からも激励のメッセージが。普段は厳しい先生からのメッセージをいただいて泣いてしまった。何としても完走しなければ。

 トンネルを通過していよいよ富士見峠への登りへ。車から沢山応援をいただく。脚の痛みであまり応えられず申し訳なかった。少しスイッチが入って小走りで進む。後ろから円井さん夫妻が車で応援してくれた。もう涙なのか雨なのか分からない。頭で進まないとと思っているのに脚が30cmも出ない。再びデジャヴが襲ってきて言いようのない恐怖と不安が。ここで大会中、初めて妻に電話する。今脚がヤバい事、頭がおかしくなってしまったかもしれない事。話しているうちにまた泣いてしまった。妻は大丈夫、進めば必ずゴール出来ると言ってくれた。少し落ち着いて電話を切る。雨はずっと降っていた。

 16:30
 峠手前の自販機でジュースとコーヒーを一気飲み。カフェインを入れれば頭はマシになるだろうか。峠道は暗く車通りも少ない。たまにすれ違う車からは大丈夫か?と言われるようになった。相当ヤバそうだったのだろう。先を見るとまだまだ登りが続いている。4時間近く歩いてもまだ10kmも進んでいない事に気がついて、カフェインで少しスッキリした頭で残り時間と距離を計算する。残りは50km、制限時間まであと10時間。時速5kmで休まず行かないと厳しい。うーん、これは厳しいな。体に比べてわりと頭は冷静みたいだ。しかしここから徐々に一歩の間隔が狭くなっていく。

 17:30
 富士見峠手前で自転車仲間のざくさん、ばるさん、ふぃりっぷさんが応援に来てくれた!本当なら嬉しいはずなのに、足が殆ど動かずにいた僕は応援に応えられない自分が情けなく泣いてしまう。ブログを見ていてくれたプロテクトS1の社長さんも応援に来てくれた。自分のミスでプロテクトS1を切らしてしまった事を申し訳なく思う。4人の応援を受けて進む。

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富士見峠を通過する。おそらくリタイア直前の写真(ふぃりっぷさんに撮影していただきました)

 18:30
 富士見峠は何とか越えた。後は下りだけだ。制限時間まで9時間。やれるとこまでやる、時間切れでもゴールまで行こう。頭は冷静だ。
 でも現実は残酷だった。登りではまだ進めた脚も、下りになったとたん全くダメになった。一歩進むと体を支え切れず転倒。膝が曲がらないので起き上るまで15分ぐらいかかる。ここでストックを無くしている事に気がついた。おそらく畑薙ダムでさまよっていた時だろう。下りでは曲がらない膝を支える物が無いので何歩か進む毎に転倒を繰り返す。そして起き上るのに時間がかかる。時速100mも進まなかった
 ここから先は携帯も通じない。動けないので体温も上がらず、雨でどんどん体温が奪われていく。この先へ突っ込んでしまえば結果は見えている。

 僕のTJARが終わっていく。

 携帯でチームメンバーに終わりを告げた。同時に家族にも。直ぐ近くまで来てくれていたチームの安井さんが迎えに来てくれるという。
 もう一歩も進めない。いつの間にかまわりは暗くなっていた。申し訳程度にヘッドライトの明かりが点いている。前にも後ろにも進めない状態で雨の中安井さんの到着を待った。
 少しして車で駆けつけてくれた安井さんの車に乗せてもらう。この瞬間、僕のTJARは終わった。

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駆けつけてくれた安井さんが撮影してくれた、最期の写真

 乗り込む時に脚を曲げるととんでもない激痛が。その後合流した家族の車に乗り換えて静岡市街まで峠道を下った。
 車内では涙が止まらなかった。悔しさだろうか、情けなさだろうか、痛みだろうか。色々な感情が決壊したように溢れて来る。
 少し落ち着いて、電波の入るところで大会本部にリタイアの連絡を入れた。リタイアしますと言うとやっぱり泣いてしまった。何を言ったのかもあまり覚えていない。その後はただ車の揺れをシート越しに感じていた。

 TJAR2014 リタイアその後へ
日々練成

 
[ 2014/09/01 19:51 ] 2014TJAR | TB(0) | CM(2)

みさごさん、こんにちわ。

本当にお疲れ様でした・・・としか言えなくてすみません。
畑薙ダムを下りてからの道路が疲れた足には過酷ですね。他の選手の方の画像でも、足裏の皮膚がふやけてひどいことになっていましたが、ほとんどの方がそんな感じになるんでしょうか。

井川駅はけっこう小さい建物ですが、ラーメンとか食べられるんですね。山の中にぽつんとあって、近くにダムくらいしか観光地がなかったので、普通の観光の方は、終点のこの駅で降りてどーするのかな???と思ったほどです。

大会からだいぶお時間が経ちますが、みさごさんは後遺症(というのは少し大げさですが)もなく普通に日常生活を送っていらっしゃるんでしょうか?それなら幸いです。
[ 2014/09/02 16:05 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 青レンジャー さん

 いつもありがとうございます。
 最後のロードは地獄といわれるぐらい過酷です。TJARの中間は畑薙と言われるぐらいです。ここまでいかに足や体力を残しておくか。また折れない心を持つかが重要ですね。僕はどちらもダメでした。反省です。

 井川駅では老夫婦がボリュームいっぱいのおでんやラーメン、焼餅を食べる事が出来ます。ここでかなり助けられました。また行ってお礼としたいと考えています。

 大会直後はひどいもんでしたが、ようやく10km走れるくらいになりました。仕事も問題なくやっております。ご心配おかけしました。ありがとうございます。
[ 2014/09/02 19:26 ] [ 編集 ]

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